きらっと光って消える“刹那”が好き - 第3回 Alche株式会社 代表取締役社長 川 大揮 氏(後編)

前編では、Alche株式会社の川さんに学生起業した経緯を中心にお話を伺いました。大学と大学院で研究した宇宙論のことやマジックサークルに入ってステージに立った経験など、川さん独自の世界観に魅了されつつも、その世界を紐解きたいと思い、後編のテーマである「偏愛」について触れながらインタビューを進めました。

後編では、本連載のテーマである「偏愛起業主義。」に基づき、好きなものを追求すること=偏愛が、起業に繋がるのではないか? という仮説を、東工大出身の起業家の先輩たちへのインタビューを通して検証していきます。

Interviewee:Alche株式会社 代表取締役社長 川大揮さん
東京工業大学 理学部卒及び大学院 理学院物理学系物理学専攻修士修了。大学在学中、ステージマジックサークルに入り、魔法や不思議な出来事を通して人を楽しませる楽しさに魅了される。VR技術を使って、夢や魔法が実現する世界をつくりたいと思い、Alche株式会社を創業。

Alche株式会社について
デジタルやメタバースという新たな空間を切り拓き、⽇常をより⾊鮮やかにするようなデジタルコンテンツの開発を⾏っているクリエイティブチームです。想像の世界に⼊り込む体験を通して、あらゆる⼈々に勇気と笑顔を、そして、新しい価値観を提供することを⽬指しています。プログラマー、CGアーティスト、建築デザイナー、マジシャン、ダンサー、画家、作曲家、数 学・物理など、多様なバックグランドを持った仲間で構成されています。

きらっと光って消える「刹那」が好き

―――本コラムのテーマの「偏愛至上主義」。好きなものを追求すること=偏愛が、起業のドライブになるのではないかと仮説を立てているのですが、偏愛するものはありますか?

魔法や、想像の中でしかできないことを表現し、「楽しい」「感動する」という感情をつくっていきたい。CGに限らず、チームラボのようなリアルの世界や、マジックショーも結構好きですね。
光とかに興味があるんですよ。CGとかも光がどう飛んできてどういう風に反射してどう見えるか、みたいな話ですし。そこに音楽的な要素があると、より面白く感じたりすると思いますね。一瞬の輝きで言えば、「刹那」みたいなものも好きで。きらっと光って一瞬で消えてしまうような、儚さみたいなものが好きで、芸術的な要素を感じます。

――― そういうものが好きになったのはいつの頃からですか?

昔から好きだったんですけど、チームラボの「Light Sculpture」というレーザーライトだけで彫刻のような形を表現している作品を見て、光や輝きとかが好きなのだなと気づきました。ステージとかもそう。ステージに立つと、かなりスポットライトがくるので、そういう光も好きだったりしますね。

ユーザーの欲しいものより、自分のつくりたいものをつくりたい

――― 川さんのお話を聞いていて、‟プロダクト”というよりも”作品づくり”みたいな感覚が強いのかもしれないと思ったのですが、いかがですか?

そうです。僕自身、プロダクトよりも作品に興味があるので、作品をつくっていきたいという思いはあります。とはいえ、つくるにはお金が必要だったりして、会社をやっていく上ではプロダクト寄りにならなくてはいけない部分も必要。ビジネスをやっている以上、プロダクトとして成立させていくことは大切です。

―――とても共感します! 私も自分のつくりたいものをつくりたいタイプなので。悩ましいなと思うことが多いです。

そうですよね。でも、ユーザーが欲しいものをつくろうとしたら「別に自分じゃなくてもいいじゃん」ってなるじゃないですか(笑)。そこは難しいですよね。ロジックを組み立てていくのは気持ちいいのですが、好きかというと……。ロジックではなく感情的にやっていきたい。ただ人を説得するときはロジカルな部分も必要なので、仕方ないと思っています。でも、理論的にやろうとすると、みんな同じような回答に近づいていく気がしていて。
他の人があんまりやらないようなことをやるには、感性を大事にしたいなと思っています。いまの時代、人間らしいもの、自分が好きなものを試しやすくはなってきていると思うので。

――― 最後に、東工大の後輩たちへのメッセージをお願いします。

「とにかくやってみる」「一歩踏み出していくこと」ですね。そして、一歩踏み出したことをやり抜く。色々やらず、1つに絞るのが、最近僕はすごく大切だと感じてます。いつか何か見えるかもしれないと信じて、やり続けていく。当たり前かもしれないですが、大切だと思います。

前編に引き続き、頷きすぎて頭がもげそうになるくらい共感of共感なお話でした。特に川さんの最後のメッセージでは、「踏み出す」「やり抜く」「やり続ける」というキーワードが出てきましたが、実際には文面の1.7倍くらいこの言葉が繰り返されていました。

一般的な起業家インタビューでは、起業の経緯や成功後のエピソードを取り上げられることが多いです。しかし、私も自ら起業し、継続させる難しさを感じている中、その継続性に触れるものは多くないことに気づきました。エピソードとしては地味で、起業家からすると話したくないことかもしれない。だからこそ、本連載では掘り下げてみたいと思いました。そこで継続性のドライブとなるもの、その答えの1つとして「偏愛」がなければ、事業継続は難しいのではないか? という仮説がうまれたのです。だからこそ、後編の川さんの言葉はどれも心に刺さりました。私も「絶対やめないこと」をポリシーの1つとしていて、それを改めて守り続けていこうと思います。

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メッセージ
川 大揮 氏 / Alche株式会社 代表取締役社長(後編)
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