第3回はAlche株式会社 代表取締役社長 川大揮さんにお話を伺いました。本連載では東工大出身の起業家の先輩方を中心にインタビューをしていますが、川さんは学生起業され、学年が1つ上、また起業タイミングも近く……。そのため、「わかりすぎる〜!」と共感できる部分や、「そう考えればいいのか!」と同年代だからこその身に沁みるお話を聞けました。
前編では東工大出身の起業家の先輩に、恐れ多くも気になる10個の質問をカジュアルに聞いていきます。大変失礼ながら、あえて事前に質問をお送りすることもなく、その場のノリと雰囲気でお答えいただきました。それ故に、垣間見える東工大卒起業家のリアルな一面をお届けできればといいなと思います。
Interviewee:Alche株式会社 代表取締役社長 川大揮さん
東京工業大学 理学部卒及び大学院 理学院物理学系物理学専攻修士修了。大学在学中、ステージマジックサークルに入り、魔法や不思議な出来事を通して人を楽しませる楽しさに魅了される。VR技術を使って、夢や魔法が実現する世界をつくりたいと思い、Alche株式会社を創業。Alche株式会社について
デジタルやメタバースという新たな空間を切り拓き、⽇常をより⾊鮮やかにするようなデジタルコンテンツの開発を⾏っているクリエイティブチームです。想像の世界に⼊り込む体験を通して、あらゆる⼈々に勇気と笑顔を、そして、新しい価値観を提供することを⽬指しています。プログラマー、CGアーティスト、建築デザイナー、マジシャン、ダンサー、画家、作曲家、数 学・物理など、多様なバックグランドを持った仲間で構成されています。
好奇心が強い方で、特定の分野について詳しく、というよりは色々なことに興味があるタイプ。その中で、「もう少し深掘りしてみよう」というのを複数やっている感じです。人を笑顔にさせるようなものをつくりたいと思っています。
性格は、心配性と好奇心が混在している。高校のテストで「やばい、赤点を取る」と心配になり、勉強を頑張ったら、面白くて1番になっちゃうみたいな(笑)。そういう真面目すぎるところもあると思ってます。
学部と大学院とも物理学の宇宙論を専攻してました。物理学に興味を持つようになったのは高校2〜3年生くらい。それまでは、ずっとサッカーをしていたのですが、高校生になる頃には、サッカー選手まで行ける気がしなかった部分もあって。
でも勉強は、すぐに成果が出るから頑張れたんです。予備校に通い始めてから、物理の先生の話していることに好奇心が湧いてきて。それで、東工大に入学して勉強をしながら、宇宙論を専攻しました。
大学時代にマジックサークルに入っていたんです。400人くらいの前でステージマジックを披露していて。曲に合わせて、何をどの順番でやったらお客さんに楽しんでもらえるかを考える中で、エンターテインメントや人の感情、誰かの笑顔をつくることが面白い、と。物理学のように世の中の構造を解き明かすのもいいけれど、人との関わりの中で何かをつくるのも素敵だと思うようになりましたね。
このまま研究者でいくのか、それとも社会に出るか、という2つの選択肢があり。別の選択肢が見えている時点で、選ぶべきものは研究者じゃない、という気がして。まら、研究者だと社会との繋がりが少ないと思ったのです。物理の大発見など、自分が生きているうちには、フィードバックを得られづらいというか。
起業したら社会のことがわかる、と思い、サイバーエージェントのイベントに参加してみました。起業中や起業準備中という人が多い中で、僕だけ起業についてほぼ知識がない状況でしたが、たまたま選考に受かり、VCの方々と事業を生み出す経験をしました。その時に、自分の周りの人たちが起業家ばかりという環境になり、起業って面白いかも、と思いはじめました。一方、大企業のインターンでは、自分のやりたいことを提案しても「それも選択肢の1つ」という程度で終わってしまいます。その経験から、何かを自分でつくること、自分で進めていくことに面白さを感じて、起業しようとなりました。
良かったです。早く社会との接点を持ったので、様々な人との出会いを通じて色々な価値観を勉強出来たり。人と人との関わりの中で、しっかり成長していくので。
自分は学生2人で起業したのですが、大学生で「何か一緒にやろうぜ」と起業するハードルと、社会人同士で一緒に会社をやめて事業を始めるハードルだったら、前者の方が楽ですよね。年齢が上がるほど、お金や家族の問題でやれなくなったりするので。僕は、創業後1年半くらい無給で会社をやっていたんですけど、そういう無理がきくのも学生起業のメリットだと思いますね。
1人でやるよりは2人の方が、起業する勇気が半分くらいにはなるかもしれない。励ましあえたり、事業も壁打ちができたほうが良いものがつくれるし、その後仲間を集めやすいと思います。
僕達は、そんなに揉めることはなかったのですが、方向性の違いで、最初の共同創業者とはお別れしたんですよね。会社にとっても辛い部分はあるし、これから大丈夫かなという不安もありました。なので、共同創業者と方向性を合わせておくとか、方向性の合う相手をパートナーとして選ぶことは大切だと思います。
1つは感情(笑)。事業をしていると色々な事が起こるので、1回1回反応できなくなっちゃう。感情の浮き沈みがなくなったというか、なにかを感じとる暇が無いというか。ドライになっちゃう部分がありますね。起業すると、考えることが多く、同時に違うことを考えながら話していたりするので。
あと、完全にプライベートでぼーっとする時間は、失われるっていうより無くなっちゃうかな。その分、人との繋がりは大きくなっていますね。
信頼している人や、一緒にやっている人が去るタイミング。仮に会社のお金が無くなってしまったら申し訳なさが一番きついと思うし、成功しても、この人たちと一緒で良かったなと思います。人との繋がりが自分の心に一番影響があるのかなと思います。
先輩の起業家やお世話になっている方、世界で活躍している起業家、すごいなと思う方はたくさんいます。一方で特定のこの人というのは、あんまりいないんですよね。起業家に限らず言えば、MISAMOなどのK-POPアイドルは凄いなと思います。あんな風に動いたり、表情管理ができたりするのって(笑)。中学生くらいにアイドルが好きだった時期があり、多くの人を魅了している、楽しませているステージでのパフォーマンスに憧れがあるんですよ。
絶対にやりたいことは、1000万人くらいが見てくれるようなパフォーマンスを、デジタルやメタバース上でつくっていきたいなと思います。やりたくないことは、僕お腹があんまり強くないので、水がキレイじゃない場所には行きたくないですね(笑)。
今回、川さんへのインタビューは、東工大出身の起業家に、「瞬発力でリアルな回答をしてもらうこと」を最も達成できたと思います。(特に前編は、読者モデルやインフルエンサーへのインタビューをイメージ)。起業とは縁遠い人が素朴に感じる質問を投げかけることで、起業家のプライベートな部分が見えるのでは? と考えた内容でした。(質問案は実際に起業と縁遠い人にも協力してもらっています)。それ故に、川さん独自の世界観や頭の中をすこし覗きみさせてもらえたような気がしました。
後編では、きらっと光って消える「刹那」が好きだという川さんワールド全開なお話を聞いていきます。
キーワード
上記は、取材時2024年1月時点のものです