前編では株式会社DONUTS取締役の根岸さんに、気になる10個の質問について、恐れ多くもカジュアルに聞いてみました。その回答の中でも、自分の“好き”に素直に向き合うことを大事にしているという話がありました。
本連載のテーマは「偏愛起業主義。」。後編では、好きなものを追求すること = 偏愛が、起業に繋がるのではないか?という仮説を、東工大出身の起業家の先輩たちへのインタビューを通して検証していきます。
Interviewee:株式会社DONUTS 取締役 根岸心さん
東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻修士課程修了。 2004年4月株式会社DeNAに新卒第一期生として入社。法務・経理・営業・マーケティング・システム部門と横断的に関わる業務フローの設計、業務システムの企画を担当。 2007年2月株式会社Donutsを共同創業し、取締役に就任。株式会社DONUTSについて
“インターネットを通じて、世の中の時流を変える”ことを掲げ、IT分野の5領域(ジョブカンシリーズなど企業のクラウド型業務支援サービス、ゲーム、動画・ライブ配信、医療、出版メディア)を軸に事業展開している。一見すると全く異なるジャンルのプロダクトがシナジーを生み出し、2007年の創業以来、高い成長率を達成している。※2021年6月に社名表記を株式会社DONUTSに変更(登記上の商号は変更せず)
偏愛ということになるのか分かりませんが、やはり技術やコンピューターにすごく関心を持ったということはあると思います。結局、スタートアップのことを本で読んだ時に、これからは技術だ! エンジニアリングだ! と思って起業し始めたというのもあるから。どちらが先かはわからないですが……。
でも、何か物事を変えるとか、何かをつくり出すことが好きなんだと思いますね。あらかじめ提示されていない何かを自分で考えつくり出すっていうことに対して興味関心が強いんだと思いますね。それの1つの表現方法が、起業だったり、コーディングだったりするのかな。
ある程度のプロトタイプだったり、技術がどうなっているかを把握する程度のコーディングは、今改めてやるようにしていますね。そこから新しい刺激を受けることもあって。面白いですね。
ミッションやビジョンなど自分が心底思っていることに向き合っている人ほど、強いと思います。お金持ちになりたいとか、別の目的が本当はあるのに、さも、それらを目指しているかのように振る舞うと苦しくなってくるし、なかなか持続は難しいんじゃないかな、と。やはり、好きなことだったり、これをやりたいんだ! っていう強い想いを持っている人の方が、どんなに困難な事があっても乗り越えられるし……。逆に、困難しかないっていうのもよく聞く話ですよね。
そんなに大変な道をあえて選ばなくていいんじゃないの? って言われることもありますよ。自分では、当たり前にやってる事を言われるので、いまいち分からないのですが。他の人達があえて向き合わないことに、向き合わざるを得ない事が喜びになっている状態じゃないと、続けることって難しいと思いますね。
だからこそ、何かを生み出せる。多くの人達にとっては、成功の部分しか見えないけど、例えば大谷選手だって、めちゃくちゃ苦しいことの連続だと思うし、いろんなものを捨てて今に至っていると思うので、それだけ苦しい中でやり続けることができるかは、すごく重要だと思いますね。
僕は、17歳だった時の自分が今の自分を見た時、やはり目指したいと思える自分でありたい、という気持ちを常に持っているんです。この人達みたいになりたいと思った自分がいて、そこに到達したいし、超える存在でありたい、というのがベースにあります。だから、鍛錬し続けないといけないし、とどまることは許されない。
「技術で世の中を変えたい」という想いも、まだ自分が思っていた規模感では達成できていないから、今それをとにかく目指し続ける過程であることも、原動力になっていると思いますね。
起業するしないに関わらず、後悔しない選択をしてくれたらなと思います。その時不安に思っていることって、大体は乗り越えられることだと思うんですよ。その時は、「これが限界」「もう出来ないんじゃないか」と恐れがあるかもしれないけれど、大した問題じゃないことにつまずいていることも多いと思うんです。勿論、苦しい事は沢山あるけど、それを乗り越えるだけのポテンシャルはみんな持っている。
結構、保守的な選択をする人が多いじゃないですか。まわりからも(保守的に)言われるだろうし、自分でもこういうのが妥当なんだろうなって。本当の自分が求めている何かに近づこうとすると、別の何かを失ってしまうんじゃないかと思うんだけど、大したことないから、まずは一歩踏み出してみたらいいと思います。
後編では、根岸さんに起業に偏愛が必要かどうかの観点でお話を伺いました。私自身が「なぜ、いつもそんなに苦しそうなの?」と言われて、自分の道はこれであっているんだろうか……と、タイムリーに不安で病んでいたので、根岸さんの言葉を聞いて勇気をもらえました。
確かに他の人が選ばない道をわざわざ選んでいるのだから、苦しいのは当たり前。それは理解していたつもりでした。しかし、他の人、特に同世代の起業家の成功を見ると、根岸さんのいう通り成功箇所しか見えていないから、「自分にはやっぱり何もできないんじゃないか……」と急に自己肯定感ズタボロモードに突入して病んでいました。
根岸さんの言葉を深く胸に刻んでも、病むのは止められないかもしれないですが、きっと起業していなかったら他の起業家の成功を見てもこんなに病まないはず! 困難の1つとして喜んで受け入れて、幸せに病んでいけたらいいなと思いました。
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上記は、取材時2024年1月時点のものです