Tokyo Tech Startup Night event_report tokyo tech startup night

東京工業大学 研究・産学連携本部イノベーションデザイン機構は、2023年6月29日(木)虎ノ門ヒルズCIC Tokyoにて、Venture Café Tokyoとの共催イベント「Tokyo Tech Startup Night ~世界を変える、大学発‘テック’スタートアップ~」を開催致しました。
本イベントでは学生、研究者総勢16名による3つのピッチセッション、および起業家による講演やディスカッションが行われ、会場とオンラインから500名を超える方に参加頂きました。会場内は各セッション満席、立ち見続出と熱気はすさまじく、まさに日本の「大学発‟テック”スタートアップ」がつくり出すソーシャルインパクトと、期待感を感じさせるものとなりました。

Opening:Tokyo Tech Startup Night 「世界を変える、大学発“テック”スタートアップ」

本学研究・産学連携本部 イノベーションデザイン機構 辻本機構長の「“世界を変える”大学発“テック”スタートアップを育てる」というミッション宣言の下、本イベントがスタートしました。

Keynote Speech:WOTA株式会社 代表取締役兼CEO 前田瑶介氏 
「あなたも世界を変える起業家になる」

 水道補完から水道代替ビジネスへ、世界の「水問題」に立ち向かう前田氏から起業家達への熱いエール。それは、「何を持っているかではなく、何をやりたいか」。今あるリソースよりもまず、想いを持ち、それを伝えていくことが何より大切だというメッセージを頂きました。

世界を変える、学生起業家たち 学生スタートアップ支援等を活用した学生起業家7組によるピッチセッション

学生ピッチセッションでは立ち見が続出し、熱気に包まれる会場。
 ピッチセッションの皮切りは、学生スタートアップ支援プログラム等を活用した学生起業家7組からのピッチにて始まりました。まずは、ファーストピッチの株式会社Quantum Zero CEO藤崎さん。藤崎さんからは固体量子センサーの広がる可能性について、2番手の株式会社CoilSite CEO細井さんからは、ゲームビジネスを展開する上での魅力と課題についてのプレゼンテーションが行われました。
 続いては、スマートブックス株式会社の代表取締役社長の冨田さん。冨田さんは子どもをデジタル犯罪等から守るAIサービスの重要性について熱く語られ、株式会社メンヘラテクノロジー CEO高桑さんからは、「幸せに病める世界をつくる」というスローガンの下に誕生した匿名相談アプリ、「メンヘラせんぱい」や新アプリ「DIALS2(ダイヤルエスツー)」等のご紹介を頂きました。
 その後は、本学環境・社会理工学院 博士課程 早川さんによる電車混雑のリアルタイム見える化システムについて。起業準備中という早川さんが開発するシステムの実装化へ、コメンテーター達の期待も集まります。引き続きは、株式会社スパイスエンジンCEO 神宮司さんによる超高速AI実行基盤の創出のご紹介が行われました。7組目の最後は、本学環境・社会理工学院 博士課程 今村さんからの、農業ビジネス革新のスマホと独自のセンサーを使って、施肥設計と土壌管理できるアプリ「農Sight」のプレゼンテーション。農業現場からのオンラインプレゼンを通じて、その熱意が伝わってきました。
 以上7組の学生起業家達の多種多様なピッチに、会場は大盛り上がり。立ち見が続出しておりました。

ピッチ登壇者

  1. 「固体量子センサーを誰もが使える世界にする」 株式会社Quantum Zero CEO 藤崎伊久哉さん
  2. 「ARで世界中の人々の日常とエンタメを融合する」 株式会社CoilSite CEO 細井椋太さん
  3. 「AIで、いじめや犯罪、スマホ依存から子どもを守る社会起業家」  スマートブックス株式会社 代表取締役社長 冨田直人さん
  4. 「幸せに病める世界をつくる、女性起業家」 株式会社メンヘラテクノロジー CEO 高桑蘭佳さん
  5. 「混雑のリアルタイム見える化システムでスマート社会を実現」 東京工業大学 環境・社会理工学院 博士課程 早川智義さん
  6. 「超高速なAI実行基盤の創出」 株式会社スパイスエンジンCEO神宮司明良さん
  7. 「新規就農者、小規模農家の生産性を革新する『農Sight』」 東京工業大学 環境・社会理工学院 博士課程 今村悠樹さん

コメンテーター

  • Beyond Next Ventures株式会社 執行役員/パートナー 橋爪克弥 氏
  • 株式会社みらい創造機構 執行役員 パートナー 高橋遼平 氏
  • 東京工業大学 研究・産学連携本部 及部智仁 特任教授

Open Discussion:日本から、世界を変える大学発スタートアップを生み出すには~学術研究の役割、事業成功の必須要素、近年の投資動向~

左から、辻本将晴機構長、木場祥介氏、山本貴史氏、芦澤美智子氏

 続いてのオープン・ディスカッションでは、本学研究・産学連携本部 イノベーションデザイン機構 辻本将晴機構長がモデレーターを務め、日本のアカデミアスタートアップを取り巻く状況について熱い議論が繰り広げられました。スタートアップを生み出す文化の醸成や、海外進出の重要性などが登壇者達から熱く語られ、会場の参加者がうなずく場面も多く見られました。「ユニコーンを創出するための施策と、スタートアップを志す研究者の裾野を広げるための施策は、全く異なるもの。議論をするときも明確に区別が必要である」との山本氏からの提言を受け、辻本機構長から「ユニコーンを目指す研究者を対象としたプログラムと、研究者への起業喚起のプログラムは切り分けながら、今後も支援を拡充していきたい」とのコメントがありました。

モデレーター

  • 東京工業大学 研究・産学連携本部 イノベーションデザイン機構 辻本将晴機構長

パネリスト

  • ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社 代表取締役 パートナー 木場祥介 氏 
  • 株式会社東京大学TLO 代表取締役社長/東京大学エクステンション株式会社 代表取締役社長 山本貴史 氏
  • 横浜市立大学 国際商学部 国際商学科 准教授 芦澤美智子 氏

※所属・肩書はイベント開催時のもの

研究者ピッチセッション①:先駆的な技術で世の中を変える~東工大・芙蓉 Gap Fund/東工大基金「スタートアップ支援基金」Demo Pitch~

スポンサー、ゲストスピーカー: 芙蓉総合リース株式会社 取締役会長 辻(辻は点が一つのしんにょう)田泰徳 氏

 研究者ピッチセッションの前半はTokyo Tech Gap Fund Program 2022※のDEMO Dayとして、本学4名のGAPファンド採択者達が、6月末までの成果を発表しました。冒頭は、東工大・芙蓉Gap Fundのスポンサーである芙蓉総合リース株式会社取締役会長 辻(辻は点が一つのしんにょう)田泰徳氏によるゲスト・スピーチ。会長ご自身のご経験に基づいて「3つの壁とGAPファンドの役割」について、お話を頂きました。
 その後、当該Gap Fundまたは東工大基金「スタートアップ支援基金」採択者である本学研究者達によるピッチと質疑応答が行われました。コメンテーターからは、「非常にユニークで素晴らしいので、是非ビジネスモデルを書いてみてほしい」や「ビジネスモデルをいくつかつくることで、どれが実現化しそうなのか、そしてそのモデルを進めるためにどのような研究開発が必要なのかがわかってくると思う」など、ビジネス実装化にむけたエールが送られました。

※Tokyo Tech Gap Fund Program 2023: 8月より公募スタート。詳細は、以下ページに近々掲載予定。

スポンサー、ゲストスピーカー

  • 芙蓉総合リース株式会社 取締役会長 辻(辻は点が一つのしんにょう)田泰徳氏

ピッチ登壇者

  1. 「共有結合性有機骨格の社会実装に向けて不可欠な材料生成スケールアップ基盤の確立」 東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所 村上陽一 教授
  2. 「可視化 I 型コラーゲンにより科学的に機能が証明されたコラーゲン分泌促進成分・素材の開発」 東京工業大学 生命理工学院 田中利明 助教
  3. 「高温融体等を応用した環境浄化と希薄資源の回収・有効利用に関する戦略的技術開発」 東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所 近藤正聡 准教授
  4. 「革新的な輸送サービスを可能にする、折畳収納式自立航行無人輸送機 LODAV の開発」 東京工業大学 工学院 坂本啓 准教授

コメンテーター

  • 株式会社みらい創造機構 代表取締役社長 岡田 祐之 氏
  • ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社 アソシエイト 沈相勲 氏
  • 東京工業大学 研究・産学連携本部 特任教授/CIC Tokyo ゼネラル・マネージャー 名倉勝 氏

研究者ピッチセッション② :注目 KEYWORD から大学発ディープテックスタートアップ ~Greater Tokyo Innovation Ecosystem :GTIE 2022 年度 GAP ファンド採択者より~

 最後は、GTIE(https://gtie.jp/) GAPファンドで支援した研究者5組によるハイレベルなピッチが会場を沸かせました。登壇者達が、3月末のGAPファンドプログラム終了時点よりも確実に事業化に向けて前進があったのが印象的でした。中でも、東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 教授 池内真志 氏の「精密医工学による生殖補助医療支援システム」は、不妊治療においての授精作業をAIや専用の器材によって自動化し、胚培養士不足の課題解決や治療成功率の向上を図るというもの。コメンテーターからは、「ペインが大きく、ニーズの高いビジネス・研究ゆえ、世界展開が可能だと思います」といった期待感溢れるコメントがありました。

ピッチ登壇者

  1. 【スモールデータ AI】 「診断支援システムの多品種短期開発 〜米国市場の検討〜」 東京工業大学 科学技術創成研究院 鈴木賢治 教授
  2. 【Healthcare Automation】 「精密医工学による生殖補助医療支援システム」 東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 池内真志 教授
  3. 【バイオ創薬】 「新規国産ゲノム編集 TiD の基盤技術開発」 東京工業大学 生命理工学院 刑部祐里子 教授
  4. 【老化創薬プラットホーム】 「Aging 創薬 プラットフォーム 構築 とサルコペニア 治療薬開発」 慶應義塾大学 医学部 整形外科学教室 特任講師 早野元詞 氏
  5. 【次世代エネルギー】 「熱源に埋めて使う半導体増感型熱利用発電の事業」 東京工業大学 物質理工学院 准教授/株式会社 elleThermo 創業者/CEO 松下祥子 氏

コメンテーター

  • 新生キャピタルパートナーズ株式会社パートナー 藤波亮 氏
  • 東京工業大学 研究・産学連携本部 イノベーションデザイン機構 真尾淑子 副機構長

Closing (20:55~21:00) :オーディエンス賞の表彰

 Closingでは、学生/研究者の計16組のピッチ参加者の中において、来場者および視聴者の投票による「オーディエンス賞」の表彰が行われました。(副賞:INDESTコワーキングスペース1か月無料試用券)受賞されたのは、以下3名。

  • 学生起業家ピッチ受賞者:株式会社メンヘラテクノロジー 高桑蘭佳 CEO
  • 研究者ピッチ①受賞者:東京工業大学 生命理工学院  田中利明 助教
  • 研究者ピッチ②受賞者:東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 池内真志 教授

さらに会場中心では以下の企業・組織によるデモテーブルが設置され、多くの来場者から関心が寄せられていました。

東工大発ベンチャーやチーム東工大におけるデモテーブル

出展者

―東工大発ベンチャー

―チーム東工大

こうして計5時間にわたり、ピッチやディスカッションの5セッションとデモ展示が繰り広げられた「Tokyo Tech Startup Night」は大盛況に幕を閉じました。起業家/スタートアップ、アカデミア、企業、投資家などが交流し、世界を変えうる新たな“テック”系アイディアと才能がぶつかり合った一夜。ただしこれは序章にすぎず、この熱気と想いを繋ぎ、いかに形にできるか。スタートアップの担い手達のストーリーはこれから続いていきます。ご登壇者やご参加者の皆様をはじめ、共催として盛り上げて下さったVenture Café Tokyoの皆様、その他関係者の皆様、本当に有難うございました。