イベント・ニュース EVENT / NEWS

2023年12月6日

開催レポート:東工大最大級の産学連携イベントTTOP2023(2日目レポート)

日時2023年10月4日、5日

東京工業大学 研究・産学連携本研究・産学連携本部 イノベーションデザイン機構(以下、Id機構)は、オープンイノベーション機構(以下、OI機構)と共に2023年10月4日、5日に「Tokyo Tech OPen innovation (TTOP)2023」を大岡山キャンパス 東工大蔵前会館(くらまえホール・ロイアルブルーホール)にて開催しました。TTOPは、次世代型の産学連携プラットフォームの在り方について考える、東工大最大級の産学連携イベント。2023年度は「Diversity3.0」をテーマとして掲げ、2日間で延べ400人を超える参加者にご来場頂きました。

特に、Id機構によってプログラムが組まれた2日目は、以下7プログラム含む2つのセッション(Session 4/ Session 5)を実施致しました。

  • Session 4 :Diversity 3.0「世界を変える、アカデミアの役割」
  • Session 5:東工大発スタートアップセッション

①【ご挨拶】 「スタートアップエコシステムにおける、D&I」 

  • 本学 イノベーションデザイン機構 機構長:辻本 将晴

②【Key Note Speech】 「D&Iによるイノベーションエコシステムの変革、アカデミアの重要な役割」 

  • 沖縄科学技術大学院大学 学長:Karin Markides氏

③【インタビューセッション】 「世界を変えるテックスタートアップの成功の要諦」

  • モデレーター:本学 副学長(産官学連携担当)、 オープンイノベーション機構 副機構長 大嶋 洋一
  • パネラー:インキュべイトファンド株式会社 代表パートナー 村田祐介氏、KDDI株式会社 事業創造本部 副本部長 中馬和彦氏、株式会社Logomix 代表取締役CEO 石倉大樹氏、メタジェンセラピューティクス株式会社 代表取締役社長CEO 中原拓氏

④【招待講演】 「グローバルD&Iで成功する、ディープテックスタートアップ」 

  • 株式会社Synspective 創業者兼代表取締役CEO 新井 元行氏

⑤【東工大発ベンチャー ピッチ 】 「グローバル成長を目指す新鋭、大学発テックスタートアップ」

(計11社 ご登壇者一覧・登壇順)

※2023東工大発ベンチャー大賞、2023東工大発ベンチャー特別賞は、ピッチ終了後、視聴者からの投票結果と会場の審査員による審査をもとに表彰。

  • vivola株式会社 代表取締役CEO 角田 夕香里氏
  • 株式会社digzyme  代表取締役CEO 渡来 直生氏
  • 株式会社FerroptoCure 代表取締役 大槻 雄士氏
  • 株式会社アクセルベックス 代表取締役 石井 保之氏
  • ファスタイド株式会社 代表取締役社長 神谷 紀一郎氏
  • 株式会社ダッシュマテリアルズ 取締役CTO 浜田 省吾氏 【2023東工大発ベンチャー大賞 受賞】
  • 株式会社Logomix 代表取締役CEO 石倉 大樹氏 【2023東工大発ベンチャー特別賞 受賞】
  • Inspired Micro Crystals株式会社 代表取締役 森 肇氏
  • iPEACE223株式会社 代表取締役 樋口 量一氏
  • 株式会社elleThermo 代表取締役 生方 祥子氏
  • 株式会社スパイスエンジン 代表取締役 神宮司 明良氏

⑥【クロージング】 

  • 本学 副学長(産官学連携担当)、 オープンイノベーション機構 副機構長 大嶋 洋一

⑦【ネットワーキング】


中でも、会場を湧かせたのが  ③【インタビューセッション】:「世界を変えるテックスタートアップの成功の要諦」⑤【東工大発ベンチャー ピッチ 】:「グローバル成長を目指す新鋭、大学発テックスタートアップ」。その模様を以下にレポート致します。

【インタビューセッション】 「世界を変えるテックスタートアップの成功の要諦」

  • モデレーター:副学長(産官学連携担当)、 オープンイノベーション機構 副機構長 大嶋 洋一
  • パネラー:写真右から KDDI株式会社 事業創造本部 副本部長 中馬和彦氏(以下、KDDI 中馬氏)、インキュべイトファンド株式会社 代表パートナー 村田祐介氏(以下、インキュべイトファンド 村田氏)、株式会社Logomix 代表取締役CEO 石倉大樹氏(以下、Logomix 石倉氏)、メタジェンセラピューティクス株式会社 代表取締役社長CEO 中原拓氏(以下、メタジェンセラピューティクス中原氏)

世界を変えるテックスタートアップの成功がもたらす理想の世界とは?

  • KDDI 中馬氏:自社製品・サービスから世界を変えたい!という視座を持つ起業家が、最近は少ない。何が何でも世界を変えてやる!というグローバル視点が不可欠である。
  • インキュべイトファンド 村田氏:エコシステムの重要性を考え、Googleの例からも、アカデミアとスタートアップの協力が成功の鍵。起業家達の出身大学にキャピタルゲインをもたらす仕組みを構築すべきである。
  • Logomix 石倉氏:日本のアカデミアにおける知財の脆弱さについて対策を打つべき。知財ではアメリカに比べ日本は非常に遅れているので、スタートアップが日本のサイエンスの優位性(Science respect)を喚起させる必要がある。
  • メタジェンセラピューティクス 中原氏:解のないところに、解を見つけ、それをいかにして解くか。サイエンスへの情熱とビジネスの結びつき、博士課程においての経営者人材の育成が必要。

 問1における理想の実現に向けて、最重要課題とは?

  • KDDI 中馬氏:日本におけるロールモデルの不在。個人レベルで活躍すると、国全体が強くなる。日本におけて世界をリードする人材が不足しているのでは?
  • インキュべイトファンド 村田氏:突き抜けたロールモデルの創出が必要。政府のシステムも、一見アンフェアに見えようが、まずは突出したロールモデル創出や育成に特化すべき。
  • Logomix 石倉氏:突出した存在は必要不可欠。日本はアメリカに比べ、そういったスピード感や危機感が薄い
  • メタジェンセラピューティクス 中原氏:アメリカのスタートアップ業界は、ピッチプレゼンのフォーマットが統一されているなど、意外にも多様性が低く、皆がハイレベルに合わせるという文化。先進的なアメリカに解を求めるだけでなく、日本の良さを生かしてオリジナルを考える。それを可能にさせるのは、アカデミアである大学と政府の役割なのでは?

世界を変えるテックスタートアップの成功策とは?

  • KDDI 中馬氏:CVC(Corporate Venture Capital)にできることがもっとある。大企業が、よりリスクをとる姿勢を持つべき。
  • インキュべイトファンド 村田氏:ディープテック分野におけるスタートアップへの支援を加速させ、研究室外でのチームづくりを重視すべき。
  • Logomix 石倉氏:バイオテクノロジー分野でもAIやDX化が進み、知的財産権がより重視される中、技術実装化には、20年ほどの時間がかかる。米国は政府自身がそういったスタートアップのクライアントである、というケースも多い。一方で、助成金で支えすぎると彼らの顧客志向が鈍るので、“顧客を創造するアプローチ”が必要である。
  • メタジェンセラピューティクス 中原氏:世界最先端の研究は、スキームづくりさえきちんと行えれば、スタートアップでも可能。そういったネットワークとコミュニティの構築が重要。

※(最後に)副学長(産官学連携担当)、 オープンイノベーション機構 副機構長 大嶋より

  • 先日シリコンバレーを訪問した際に実感した、日本とアメリカの違い。それは、「ネットワーク」「Science respect(科学の優位性)」「Speed」の3つであった。本パネルディスカッションでも、アメリカとの比較の話が多くあったが、まさにこの3つが、世界を変えるテックスタートアップの成功の要諦といえよう。

【東工大発ベンチャー ピッチ 】 「グローバル成長を目指す新鋭、大学発テックスタートアップ」

 

(計11社 ご登壇)

①【AI】vivola株式会社 代表取締役CEO 角田 夕香里氏

人生101年時代の女性が生きやすくなるよう、女性のライフステージごとの健康課題を、データ解析を軸としてソリューションを提供。現在は、不妊治療に特化し、患者向け治療データ分析アプリや医療機関向けのデータ解析事業を推進。今後の展望としては、単価UPと不妊治療における、通院と通勤の両立をいかにサポートできるか。最適化の治療で、治療期間を短くするのが何より大切と考える。

②【ライフサイエンス、環境エネルギー、グリーントランスライフサイエンスフォーメーション、バイオ、AI】株式会社digzyme 代表取締役CEO 渡来 直生氏

バイオインフォマティクスによる酵素開発を通じた、新規のバイオプロセスの開発、酵素ライブラリ、酵素製品の開発。化学、食品、診断薬、廃棄物処理等の領域で、環境と経済の両立できるプロセスを提供する。本学生命理工学院准教授の山田拓司研究室のメンバー3名で創業、4年目を迎える今、12名に。ニーズに合わせた酵素の探索には、研究データを集めた汎用モデル「digzyme Moonlight」を活用、その探索効率は非常に高い。コンサルティングから酵素デザイン、酵素ライブラリ提供、そして酵素・化合物の生産提供までのワンストップのプラットフォームが強み。

③【ライフサイエンス】株式会社FerroptoCure 代表取締役 大槻 雄士氏

がん細胞の生存に寄与する「フェロトーシス抑制機構」を標的とする世界初の治療法によって、現行治療にて効果の認められないがんに高い効果を示し、がんで苦しまない社会を目指す。元々外科医であり、難治性がん患者に焦点をあてたいと起業。がん細胞は抗酸化システムに依存しており、強力な細胞死であるフェロトーシスは、新しい治療標的として注目されている。治療アプローチとしては、既存薬を再活用し、特に体重減少や副作用の影響を受けにくい治療法に焦点を当てた治験を進行中。

④【ライフサイエンス、バイオ、創薬関係】株式会社アクセルベックス 代表取締役 石井 保之氏

低コストで実現する先進テクノロジーを医療機関に提供するバイオテック自己細胞ベクター(シン・ベック)と改良型NKT細胞活性化樹状細胞の技術で、「がん難民」の救済を目指す。技術ライセンス・創薬パイプラインの創生・原薬の販売を目指し、がん性腹水を低コストで回収する方法・インキュベーション方法などの技術を持つ。最初は自由診療からスタートし、その後治験を目指したい。

⑤【創薬関係】ファスタイド株式会社 代表取締役社長 神谷 紀一郎氏

核酸医薬の配列設計・配列最適化・オフターゲット効果予測・毒性予測をIn Silicoモデルにより精度よく効果的に行い、有効でより安全な核酸医薬の開発効率を上げる。また配列の化学修飾最適化と人工核酸導入技術により有効な核酸医薬を実現する。核酸医薬は予測が難しい毒性の発現リスクがあるゆえに多くの実験による確認が必要であり、開発がうまく進んでいない現状がある。その為、核酸医薬開発段階の効果・安全性の予測精度を高め、開発効率をアップさせることが重要。難易度が高いゆえ、製薬企業による核酸医薬事業への期待も高まっている。

⑥【ライフサイエンス、バイオ】株式会社ダッシュマテリアルズ 取締役CTO 浜田 省吾氏 

【2023東工大発ベンチャー大賞 受賞】
独自技術「人工代謝系」を応用した核酸その場診断デバイスにより、いつでもどこでも、素早く安価に正確な核酸検出を実現する。医療・農業・漁業・環境など、様々な分野に適用可能な本技術で核酸検査のブレイクスルーを目指す。分子ロボティクスや分子コンピューティングにおける基礎研究の成果を応用することで、簡単・迅速・高感度・高精度なポータブル核酸その場診察キットが実現。農業・畜産・環境など医療分野以外でも、社会全体の安全安心に大きく貢献する。

⑦【ライフサイエンス、バイオ、創薬関係】株式会社Logomix 代表取締役CEO 石倉 大樹氏 

【2023東工大発ベンチャー特別賞 受賞】
合成生物ベンチャー。従来のゲノム編集単独では不可能なレベルで大規模かつ自由自在にゲノム改変でき、微生物・ヒト細胞など様々な生物種の細胞や細胞システムの機能改変が可能。現在は製薬・化学・素材系など幅広い業種の企業と協業推進中。独自のゲノム大規模改変技術を軸に、様々な微生物・細胞の高機能化をテイラーメイドに実現し、バイオものづくり、医療、食品・農業だけに留まらず、様々な領域で合成生物ソリューションを提供する。今後グローバルでの事業展開を見据え、多様なバックグランドを持った体制作りも行っている。

⑧【環境エネルギー、素材化学】Inspired Micro Crystals株式会社 代表取締役 森 肇氏

タンパク質微結晶(多角体)の優れたレアメタル吸着能を駆使して海水、濃縮海水、貴金属廃液からのレアメタル回収と排他的経済水域内の海底にあるレアメタル、レアアースの探査及び採掘を行う。昆虫由来のたんぱく質微結晶(多角体)を使って、海水淡水処理後のレアメタルの回収。鹿児島・錦江湾において海底レアメタル分布MAPの作成している。

⑨【環境エネルギー、グリーントランスライフサイエンスフォーメーション】iPEACE223株式会社 代表取締役 樋口 量一氏

エチレンからゼオライト触媒を利用して、高収率に直接プロピレンが製造の技術を有す。独自の ETP(Ethylene To Propylene)プロセスにより、バイオエタノールからプロピレンとその誘導品をサスティブルに製造する。バイオマス燃料を製造する触媒プロセスの開発、ゼオライト触媒を活用したエチレンからプロピレンを製造などCO2削減の未来に向けて取り組む。

⑩【環境エネルギー】株式会社elleThermo 代表取締役 生方 祥子氏

未利用排熱を電力へと変換する新しいエネルギー変換技術「半導体増感型熱利用発電」を開発する。安全・安心、石油資源に頼らない、狭い国土を有効利用し、安定して発電する再生可能エネルギー変換技術の構築を目指す。東日本大震災を契機に、「人々が安全・安心に使うことができ、かつ経済の発展を止めない発電システムの必要性」を痛感。コア技術である「STC(半導体増感型熱利用電池)」を活用し、室温以上の未利用排熱で電力を生み出し、限られたスペースを有効に活用できる安定した発電システムの開発、実用化を行う。

⑪【AI】株式会社スパイスエンジン 代表取締役 神宮司 明良氏

次世代の超高速 AI 基盤の創出を目指してハードウェアとソフトウェアの開発を行う。独自の回路設計技術を用いた高速化と圧縮モデルのネイティブ対応によりGPU より 21 倍速い AI の実行を実現し、エッジとクラウドの両方に展開する。【ハードウェア設計】+【ソフトウェア最適化】=【AIの圧倒的な高効率、高速化】を実現することで、AI技術を利用する全ての人々が、自由に、そして最速で推論や学習を行えるような未来を目指す。