2023年度採択者
2024年8月28日
今回、プログラムに応募した動機は、スタートアップのビジネス視点を取り入れること、また、研究の社会実装を現実的に進めるためでした。Beyond Next Ventures(ビヨンドネクストベンチャーズ)によるメンターからのアドバイスを受けることで、技術を具体的に、どのように社会に役立てるかというビジョンが、より明確になりました。
この1年間で大きく感じたのは、ビジネス視点を取り入れたことで、スタートアップの具体化が進んだことです。感想といいますか、お礼のような形になりますが、3つ感謝したいことがあります。
先ず、1つ目は、メンターです。強力な、プロの投資家の方の視点が入ることで、研究者が今まで漠然と考えていた技術を、社会に伝えたいという思いが具体化されたことはとても大きいことだと思います。
2つ目は、URAの存在。ファシリテーターの(井上主任URAの)サポートにより、研究者と投資家の間のコミュニケーションが円滑に進みました。研究者と投資家の間にはどうしてもギャップもありますから、間に入ってもらえて良かったです。例えば、定例ミーティングを開いてくれたり、メモをつくってくれたり、ファシリテーターのおかげで、検討をする、ということにおいてのスピード感が変わりました。
3つ目は、学生リサーチャーやその他のメンバーの支援です。研究者と投資家だけだと手探りで、仮説ベースで必要な情報取りにいくような中で、ちゃんとファクトチェックをして、必要な情報をまんべんなく見てくれる、というのは、非常に助かったなと思っています。ストーリーは研究者側と投資家でつくりましたが、それを裏付ける形で、自信を持つためにチェックをしてくれたというのがありがたかったです。これらのサポートがあったおかげで、漠然としていた技術の社会実装が、具体的な目標に変わりました。
このほかにも、他の参加者の先生方のお話も刺激になりましたし、(TTSN登壇の機会で)これはもう流れにちゃんと乗って、研究者として、社会に貢献しなければ、という思いに至りました。こういったイベントへの参加も、(意識の変革への)影響が大きかったなと思います。
今後2年以内に創業することを目標に掲げています。そのためには、資金をどうつないでいくか、CEOをやってくれる人をどう探すか。資金調達、人材確保、企業との共同研究を同時並行で進めていきたいと思っています。今は、先に創業が来て、お金をもらえるようになってから研究をする、というようなことも考えていますし、量子の場合は、何か特許があるから勝てるんだ、みたいなのもなくて、どちらかというと、特許を生み出せる人材をどう集めるか、そういうふうな観点にシフトしていたりもします。量子技術も基礎研究は私の専門ですが、応用研究していく中で、電子回路に詳しいとか、プログラムに詳しい、百戦錬磨のエンジニアみたいな人が入ってくれると、嬉しいです。それはスタートアップとして探す、或いは、自分が研究を進める中で、テクニシャンやポスドクとして並行的、多面的に探していくことも考えています。国からの研究費支援を受けることや、CEOやエンジニアなどの専門家を探すこと、企業に興味を持ってもらえるような製品を作ることも、計画しています。
――新規応募者へのメッセージをお願いします。
1年弱と短い期間ではありますけれども、非常に強力なサポートをいただける、有用なプログラムだと思っています。投資家には、研究者が全く持っていない目線から、どうやったら技術シーズが社会に届けられるのかといったところをサポートいただきましたし、ファシリテーターには、研究者と投資家をしっかり繋いでいただき、研究がスムーズに加速していくよう仕向けてもらえました。あとは、チームとして、学生のモチベーションもどんどん上がっていくような形で、歯車が前に進むような空気を感じられるようになりました。参加前は、正直、何となくお金もいただけるし、研究が少し進展すればいい、と思ってたのですが、9ヶ月過ぎる頃には、「これでしっかりと資金を調達して、1年以内に起業できるように頑張るぞ」と思うに至りました。ですので、皆さんぜひご検討してください。
荒井 慧悟
工学院 准教授