東工大発ベンチャー venture

Tokyo Tech Gap Fund Program 2022 採択者インタビュー:工学院 坂本 啓 准教授

~人に役に立つ価値に直結する研究成果を出せる時代~
「Don't think! Feel! 」言葉をつくすより、ものが動けば心も動く

――『Tokyo Tech Gap Fund Program 2022 (東工大・芙蓉GAPファンド)』の応募動機について教えてください

 専門知識や技術を実社会に生かすことを目指す「エンジニアリングデザインコース(以下、ESDコース)」の創設に関わったことがきっかけです。ESDコース開始の2018年6月から現在まで、教員として教壇に立ち、デザインプロジェクトを牽引しています。その中で、学生達に、プロトタイプを実装し社会に役立つプロダクトをデザインしてもらうこと、さらに自らもビジネスコンペに出場する機会がありました。これらの経験から気づいたこと、それは、「新しいプロダクトやサービスの創造プロセスと、博士論文の研究プロセスは実に似ている!」ということです。スタートアップが目指すのは、何もないところから新たな価値を生み出すこと、そういう意味では博士論文の研究と同じなのです。両者は目指すものは異なりますが、その過程には実に多くの共通点があると感じました。これなら、自分も挑戦できる!と感じました。

 また私の専門は超小型衛星で、既存部品を組み合わせて新たな価値をもたらす衛星を製作する研究を行っています。研究の中で、同じ手法で市販の部品を組み合わせ、新しいドローンを開発できる発想を得ました。そこで、今回の折畳収納式自立航行無人輸送機の開発に取り組むことにしました。

―― 『Tokyo Tech Gap Fund Program 2022 (東工大・芙蓉GAPファンド)』に1年参加してみてのご感想を教えて下さい。

 このGap Fund Programでは、月1回、社会実装化にむけて伴走支援して下さる株式会社みらい創造機構:岡田社長と、東工大研究・産学連携本部 イノベーションデザイン機構:井上URAとのミーティングがありました。これが本当に良かったです。市場起点に考えられるお2人の発想や着眼点は、研究者とは全く異なっていました。彼らのアドバイスは、技術偏重な研究者視点を軌道修正してくれるものであり、結果としてビジネス×科学の2視点を交えた議論ができるので、大変役に立ちました。また、マーケットに対する考え方や仮設検証の重要性など、研究者としては知見の薄い事柄を教えてもらえました。これらの経験から「Lean Launchpad」の考え方を体得し、自らの研究成果を実際の社会に役立てるために何が必要かのフレームワークを理解しました。

――今後のプロジェクトの展望についてお聞かせ下さい。

 ご支援頂いた資金を使って、折畳収納式自立航行無人輸送機のデモンストレーションを行いたいと考えています。飛行試験を行ってその実証を進め、ユーザーに事業化できる可能性を示したいです。学生へのよく伝えているのですが、「Don’t think! Feel! 」、言葉をつくすより、まずものが動くことへの感動を広めたい。

 また同時に、超小型衛星に関しても同じように市場化を目指したいと思っています。

――最後に『Tokyo Tech Gap Fund Program 2023』応募者にむけたメッセージをお願いします。

 今は一昔前のように、企業が大学の研究を知財として購入し、社会実装化する時代ではないと認識しています。すでにこのGap Fund Programのように、社会への貢献を直接感じられる状態で研究開発ができる基盤が整っています。人に役に立つ価値に直結する研究成果を出せる、つまり大学の教員であっても自らが社会実装まで一歩踏み出すことができる時代。Gap Fundを筆頭とした支援体制が整ってきている今、研究者自らがアントレプレナーシップを持ち、挑戦していく姿勢がより大切だと思います。是非、研究の社会実装化にむけての新たな展望を開拓するため、Gap Fundへの応募をご検討してみてください。