2025年7月25日
日時2025年 7月23日(水)13:00-17:00
2025年7月23日(水) International Open Innovation & Startup Symposium2025 ~未来を先取りするイノベーションの最前線へ!~(IOI&SS2025)において、本学認定スタートアップによる「東京科学大学認定ベンチャー」大賞ピッチコンテストを開催しました。大学統合後、初めてとなる今回のコンテストには、全9社が登壇。「世界を変えるスタートアップ」として、社会課題へのアプローチを軸に、それぞれの技術やビジョン、これからの取り組みについてのプレゼンテーションを行いました。コンテストの結果、ITAP※ 最優秀賞及び審査員特別賞として、2社が表彰されました。
コンテスト冒頭では、東京科学大学イノベーションデザイン機構 機構長・辻本将晴が開会挨拶を述べました。
「本学では『世界を変えるスタートアップを創出する』というビジョンのもと、全学的な起業支援体制を整備しています。本日の登壇企業はいずれも、社会に新たな価値をもたらすポテンシャルを秘めています。大学統合後、初開催となる本コンテストを通じて、次世代のロールモデルとなる起業家たちの成長を後押しできればと願っています」
株式会社elleThermo(エレサーモ)
キーワード: 熱発電、廃熱利用、エネルギー問題解決
東日本大震災を契機に、放射性廃棄物の出ない安全な熱源として熱発電技術を開発。国内外データセンターなどの廃熱利用を視野に入れ、量産化に向けた印刷技術を用いたスケーラブルな開発を推進中。
Crafton Biotechnology株式会社
キーワード: mRNAワクチン、不純物除去、安全性向上
名古屋大学・東京医科歯科大学発スタートアップ。独自の「PureCap」技術により、mRNA医薬の副作用を抑え高い安全性を実現。がんワクチンの開発をはじめ、創薬領域への展開を図る。
OptHub株式会社
キーワード: 最適化AI、意思決定支援、産学連携
現役学生による、東京科学大学発スタートアップ。デジタルツインによる意思決定支援に強み。現場起点での課題把握から意思決定支援までを一括提供。経路最適化などで実績があり、業種横断で展開する。
株式会社アンチキャンサーテクノロジズ
キーワード: 抗がん薬開発、PPAT阻害、アンメットニーズ
PPATという酵素を標的とした新規抗がん薬を開発。副作用を抑えつつ高い効果を持つ薬剤の創出を目指し、すい臓がんや小細胞肺がんへの展開も見据える。
ディーウェザー株式会社
キーワード: 微気象予測、都市気候、リアルタイムシミュレーション
都市スケールでの気象シミュレーションを可能とする独自技術を開発。建物・人間活動の影響を受ける都市気象を1分単位で予測可能に。リアルタイムでの災害対策やモビリティ支援に貢献します。将来的には社会インフラ化を目指す。
株式会社Vitalizar
キーワード: 呼吸可視化、健康行動、センサーデバイス
呼吸の質に着目し、健康改善に資する事業を展開。呼吸の状態を定量可視化するアプリを開発し、治療院や医療従事者向けに、体感を可視化・計測する仕組みを提供する。
株式会社東京医歯学総合研究所
キーワード: 音声代替技術、マウスピース型デバイス、QOL向上
「ボイスレトリーバー」というマウスピース型人工喉頭を開発。手の不自由な方でも使用可能で、既存製品の課題を解消。これまでに約200名へ提供済み。将来的には無音発声や変声器としての応用も視野に入れる。
iPEACE223株式会社
キーワード: 触媒再生技術、プロピレン製造、ディープテック
エタノールから高効率にプロピレンを製造する触媒技術「EP変換」を開発。スケールアップと産業化を進め、ベンチプラント稼働を計画中。
株式会社アークス
キーワード: 生殖医療支援、顕微授精AI、ロボティクス
生殖医療の精子選別と顕微授精をAIとロボティクスで自動化。既存の顕微鏡装置に後付け可能で、低価格・高精度を両立。国内では研究機器として展開、海外では医療機器としての展開を視野に。
(ピッチコンテスト登壇者のみなさま。登壇者プロフィールなどはコチラ)
審査員には、トヨタ自動車株式会社・株式会社先端技術共創機構、株式会社みらい創造インベストメンツ、株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズから、共同創業支援を行う起業支援者、先端技術の専門家など、第一線で活躍する方々が参画しました。
審査員からは、各登壇企業のプレゼンテーションに対して、技術の独自性、社会実装の可能性、事業としての成長性など、さまざまな観点から前向きな評価が寄せられました。
(審査員のみなさま)
多くの発表において「社会課題との接続が明確である」「科学的裏付けに基づいた実装力が高い」といったコメントがあり、研究シーズから事業へと昇華しようとする姿勢に期待の声が集まりました。また、「ニーズドリブンである点に好感が持てる」「技術の転用可能性が広く、異分野連携にも期待できる」など、事業拡張性に着目した指摘も多く、深い専門知見に基づいた活発な質疑が交わされました。一方で、資金調達やスケーラビリティ、レギュレーション対応といった実装段階での課題についても冷静に指摘があり、「今後の成長に向けて、戦略的なステップの整理が求められる」といった助言も。総じて、今回のピッチは「技術と社会の接点に立つスタートアップの現在地」を可視化するものとなり、審査員からは「今後の成長が楽しみ」「こうした取り組みが続くことが非常に重要」といった総括的なコメントも交わされました。
(B会場:ピッチコンテストの様子)
本シンポジウム閉会式において、ピッチコンテストの表彰が行われ、会場からは受賞者に大きな拍手が送られました。
ITAP 最優秀賞: 株式会社アークス
審査員特別賞: Crafton Biotechnology株式会社
(授賞式の様子)
株式会社アークス代表の棚瀬氏は、不妊治療向けのプロダクトを開発している会社である、とあらためて紹介し、「社会課題の解決に貢献できることが何よりの喜び」、Crafton Biotechnology株式会社代表の渡辺氏は「このような場で発表の機会を持てたことはうれしい」と述べました。
閉会セッションでは、東京科学大学 執行役副理事・古川哲史氏と理事・波多野氏が登壇し、本コンテストに寄せる期待と、今後のイノベーション創出に向けた展望を語り、閉会のことばとしました。
古川副理事は、国内外からの多様な参加者への感謝を述べた上で、現代社会が直面する複雑な課題に対して、学際・分野横断のアプローチが不可欠であることを強調。特に医療系と理工系の連携を加速させる場として、7月に設立された「国際医工共創研究院」の可能性を紹介し、大学病院を技術実装の実験場(TOC)とする構想にも言及しました。
波多野理事は、「スタートアップ的な感覚で動く大学」として、挑戦とスピードを重視しながら、世界と繋がるエコシステムを構築していく姿勢を明確にしました。資料で紹介された「六つのビジョナリーイニシアティブ」のビジョンを起点に、参加者同士のネットワークを通じて困難な課題に共に挑んでいく重要性を語りました。
(IOI&SSご登壇者のみなさま)
今回の「東京科学大学認定ベンチャー」大賞コンテストは、まさにその実践の場となるものでした。イノベーションデザイン機構としても、研究成果を起点としたスタートアップの創出と社会実装に引き続き取り組み、本学発ベンチャーが次世代の社会を担う存在として羽ばたいていけるよう支援を強化してまいります。
ご登壇いただいた起業家の皆さま、審査員・関係者の皆さま、ご来場・ご視聴いただいた全ての皆さまに、心より御礼申し上げます。今後とも、東京科学大学の挑戦にご期待ください。
(テキスト・サムネイル CM・URA 小川由美子 )