Gap Fund Program学生プロジェクトリサーチャー

2024年度参加者

2025年2月17日

物質理工学院 材料系 材料コース 森 翔也

森  翔也

参加プログラム2024年度「社会変革チャレンジ賞」リサーチャー

物質理工学院 材料系 材料コースに在籍中の森翔也さんは、2024年度「社会変革チャレンジ賞」リサーチャーとして活動しました。2023年9月から2024年1月までの約5ヶ月間、山本雅納先生のチーム(「多孔性グラフェン材料製造の技術実証」)で、海外のスタートアップに関する調査に携わりました。

経験したこと

海外スタートアップ企業の調査。


参加したきっかけ

最初に応募したのは、2023年9月、修士1年生の時でした。大岡山キャンパスTakiPlazaでポスターをみたのがきっかけだったかもしれません。問い合わせてみたものの、すでにマッチングは終了していて、そのときは参加できませんでした。「チャンスがあれば挑戦したい」と伝えていたところ、今年度、Id機構の井上URAから「山本先生のプロジェクトはどう?」と声をかけていただき、再挑戦の機会を得ることができました。

感想

リサーチャーとしての取り組みは、炭素材料技術を持つ世界中のスタートアップ企業のリサーチです。技術の社会実装可能性の検討をするための調査でした。活動期間は、5か月で、月におよそ20時間程度。学会なども忙しい修士2年生の時期でしたが、なんとか、研究と両立させられました。

調査は、山本先生、衣笠さんとの定期的なミーティングを重ねながら進めました。実際には、調査方針を決めるまでに2か月、実際に情報の整理にあたったのは、そこからの3カ月間でした。

最初は、もともと知っていたデータベースへのアクセスや論文調査などを行っていましたが、先端技術共創機構(ATAC)にご協力いただいているメンター衣笠さんから「論文調査ではなく市場調査が必要」と指摘を受けて、軌道修正しました。リサーチ結果のまとめ方には苦戦しましたが、より深い技術的分析が必要と気づき、特許情報を調べるなど、リサーチの精度を高めていくことで、より実用的な情報を提供できるようになりました。

今回は、世界中の炭素材料技術関連スタートアップを対象としています。米国、欧州、東南アジア、インド、アフリカ、韓国、中国、イスラエル、オセアニア…エリアを問わず、公開情報を整理していき、それから、各企業のCTO(最高技術責任者)の特許情報を詳細に分析しました。技術の内容、市場への適応可能性を確かめるなど、これまでにない踏み込み方を試みました。さらに、山本先生の技術との関連性を検討しながら、社会実装に向けた示唆を得ることを目的に、特定分野での応用方法などについて情報を掘り下げるという、今までにないアプローチを体験しました。

スタートアップに挑む山本先生の取組を間近で見せていただけて、技術の社会実装や大学発スタートアップの可能性についての理解が深まったように感じますし、企業の技術的優位性や競争力を客観的に評価する見方を養えたように思います。

こういったやり方は、山本先生との1対1でのやりとりや、チームメンバーの衣笠さんからの助言を通して実現しました。リサーチャーとしての期間は半年足らずなので、充分な成果につながったかわかりません。正直、参加期間が短いな、とも思いました。できれば、もうワンステップ先まで、見てみたい。たとえば、技術が実装されて、商品化されて、お客さんが使うようになるところまで見届けたいなと思えるような、たのしい、貴重な経験でした。

成果・今後の展望

スタートアップにはもともと関心があって、学部2年生頃まで起業サークルに所属していました。ディープテック系のスタートアップに関心を持ち始めたのは、東工大に移ってからです。エネルギー関連技術、とりわけバッテリーや自動車関連分野にも、興味を持っています。ぼくは、学部までは九州大学で学び、エネルギーを専門としていましたが、その後、触媒研究に携わるようになりました。つばめBHBが当時からの憧れで、修士で東工大に進学し、北野研究室で触媒の研究を続けています。

(2024年11月開催「INDEST学生カフェ~起業について語ろう~」の様子)

2024年11月には、Id機構での「INDEST学生カフェ~起業について語ろう~」に登壇して、つばめBHB株式会社代表取締役 CEO 中村 公治さんとも対談させていただくことができました。中村さんから直接スタートアップの苦労やたのしさを聞かせてもらい、圧倒されながらも、大きな刺激をもらいました。

プログラムでのリサーチ活動を通じて、自分は、研究よりも社会実装に携わる方が向いている、と感じるようになり、スタートアップ支援への興味も一層深まりました。修了後は、民間企業に就職予定で、将来的には研究開発型スタートアップの支援に携わりたいと考えています。

特に、プレシード段階における支援を通じて、大学の技術シーズと企業の事業化を結びつけるような、新しい形のオープンイノベーションの実現ができれば、と思っていたりもします。リサーチャーとしての経験は、これまでの論文調査とは異なり、技術の社会実装やビジネス展開の視点を身につける機会にもなりました。大学で培った研究スキルを活かしながら、スタートアップ支援を行う、という新たなフィールドへと踏み出すための一歩につながったように思います。

参加を検討している学生へのメッセージ

昨年の自分もそうでしたが、最初は何をすればいいか分からないことが多いと思います。
でも、ためらわずに飛び込んでみることが大切だと思います。

東京科学大学のスタートアップ技術は、日本のトップレベルだと言って間違いないですし、そこで社会実装のお手伝いができる、ってすごいことだと思います。他の大学では経験できないでしょうし、企業に入ってもなかなかない部分じゃないでしょうか。

いわゆるゼロイチの泥臭い努力の部分を知ったり、今後どういう方向でやっていくか、とか。それを、素晴らしい先生たちと一緒に考える、っていうのは他にない体験でした。研究とスタートアップの橋渡しをするリサーチャー活動は、学びの多い、貴重な経験になるはずです。

ぜひ積極的にチャレンジしてみてください!

(インタビュー・執筆 URA小川

森  翔也
森  翔也

森 翔也

物質理工学院 材料系 材料コース