2023,2024年度採択者
2025年1月23日
やりたいことは、無限にある。
参加プログラム|令和 6 年度 東工大基金による学生スタートアップチャレンジ(第8回Tokyo Tech Startup Challenge 2024))
環境社会理工学院 融合理工学系 エンジニアリングデザインコース博士後期課程に在籍中の滝沢直さんは、TTSCプログラムに2年連続で採択されました(2023年度、2024年度)。留学先のシンガポール南洋理工大学でプラットフォームビジネスの研究を行い、また起業した会社の経営も手がけています。丁寧なコミュニケーションを重ねながら、500件以上に及ぶヒアリング調査を行い、社会実装に向けた実践的なアプローチを進める滝沢さんに、本プログラムを通じての経験や感想、今後の展望について伺いました。
経験したこと
ヒアリング調査、アイデアの社会実装、ビジネスモデルの検証、など。
応募の経緯・感想
チームの結成は3年前にさかのぼります。
異なる専門性を持つメンバーとは学外プログラムで知り合い、2022年1月にチームをつくりました。メンバーは、東北大学の医大生や美大生、東工大の先輩や知人。最初の1年間は、自分たちがどの領域に取り組みたいのかをみんなで議論し続けました。そこでは、チームの軸となるビジョンを掲げることはできても、具体的なビジネスモデルの検証にまでは至りませんでした。そのような中で、イノベーションデザイン機構の井上URAから本プログラム(TTSC)への応募を勧められ、資金確保の必要性も感じていたため、参加を決意しました。
TTSCで採択されたアイデアは、高齢者向けプラットフォーム事業でした。初年度は20万円、二年目は68万円を獲得し、各年の実地調査や開発資金として活用させてもらいました。資金のおかげで、チームメンバー所縁の東京都中野区、宮城県石巻市をフィールドに、2年間で約500件のヒアリングを実施、また開発環境の整備を実現しました。株式会社D-attendができあがるために不可欠なプログラムだった、と感じています。
経験したこと・成果
高齢者の課題を解決するには、まず状況を知ることが重要と考え、地域コミュニティに足を運びました。スマホボランティア活動などに参加しながら、高齢者の方々と直接対話し、すこしずつ距離を縮めました。また、東北では医療現場にも入り込み、医療従事者や入院患者の方々にも協力をいただくことで、それぞれの視点から課題を掘り下げることもできました。実地での体験から、高齢者のニーズは、地域や状況によって異なることも実感し、一方で、医療や介護に関する課題は共通点が多く、共通の仕組みで対応できる部分があると分かりました。これらの知見をもとに、地方自治体との連携を見据えた事業展開を進めています。
TTSCプログラムの中で特に役立ったのは、メンタリングのサポートです。
1年目はグループ形式、2年目は個別形式でアドバイスを受けました。1年目はみらい創造機構(現 みらい創造インベストメンツ)金子さんに、2年目は、1on1でBeyond Next Ventures津田さんにお世話になりました。最も印象に残っているのは、津田さん「コンテクストが高すぎる」という言葉です。時にコンテクストが伝わりやすい説明が必要と指摘され、具体的かつ端的な伝え方を学んでいるところです。法人化に際しては、指導教官である西條美紀先生の助言を受け、2024年7月に「株式会社D-attend」を設立。チームメンバーとともに活動を継続しています。
スタートアップとしての意識をチーム全体で共有するまでには時間がかかりました。また、活動場所や資金の使い道に制約がある中で、検証や開発を進めるのは決して容易ではありませんでした。それでも、TTSCの支援を通じて、次のフェーズへ進むための基盤を築くことができたと実感しています。
スタートアップへ挑戦する今、多くの方々の協力を得られることには驚いていますが、最終的な決断を下すのは自分たち自身です。それでも、周囲に理解者がいることは大きな自信と心の支えになりました。
今後の展望
2024年度は、7カ月にわたりシンガポールでの研究活動を行いました。シンガポールでは、プラットフォームビジネスの事例を学ぶことができます。トップ企業の多くがプラットフォームを基盤にしており、日本のプロダクト中心のビジネスモデルとは異なるアプローチに触れています。この経験を事業に取り入れ、日本の高齢者支援にも応用したいと考えています。
高齢者向けプラットフォーム事業を通じて、地方自治体や地域コミュニティと連携しながら、持続可能な仕組みを構築することです。また、シンガポールで得た知見をもとに、グローバルな視点で事業を展開していきたいです。やりたいことは、無限にあるんです。
参加を検討している学生へのメッセージ
TTSCは、学生の起業を全力で応援してくれるプログラムだと思います。学生の起業にはタイムリミットがあります。卒業までに収益化または資金調達ができないと、事業を続けられる可能性、成功する可能性が大きく下がってしまいます。1年1年がとても重要です。大学のリソースを最大限活用して、ビジョンを実現させましょう!
■D-atttendHP https://www.d-attend.com/home/
(インタビュー・執筆 URA小川)
滝沢 直
環境社会理工学院 融合理工学系エンジニアリングデザインコース